今日は旅先でのトランスファー、移乗のお話です。車椅子だとこれが結構問題なんですよね。腕力があったり、一瞬でも立てるといいのでしょうけど。。。
私が車椅子ユーザーになって早20年。筋ジストロフィーという病気は進行性なので徐々に筋力が低下していきます。なので今は移乗については所謂「全介助」と云われる状態です。
自宅では椅子、トイレ、小上がりなど殆どが車椅子の座面高に合わせて設計されているので、ベタ付けしてお尻をスライドさせれば自力で移乗できます。しかし車やベッドは高さが違う為、妻に抱えて貰う必要があります。簡単に抱えると言ってしまいましたが、現実はそう簡単ではありません。私は180cmと背が高い為尚更です。当初、抱えるというのは難しいかと思われましたが、妻がyoutubeで[古武術介助]を見つけ練習。試行錯誤の末、今では完璧にマスターしています。スバラシ、私には勿体無い妻です。
妻がコレをマスターした事に依って、旅先での問題が大きく軽減されました。以前は旅行に60cm位のトランスファーボードを持って行ってましたが、今は無し。旅行の際にベッドやトイレの移乗で困る事が無くなりました。
もし近しい人に車椅子ユーザーや脚の悪いお年寄り等がいらっしゃるなら、覚えておくと役に立つ瞬間があるのではないでしょうか。そんな古武術介助ですが、当然それぞれの身体の状態によって最適解は違います。それを踏まえた上で我が家のトランスファーをご紹介。
車椅子→ベッド
- ベッドの横にイスを一つ用意します。
- ベッドと並行に向かい合わせで座ります。(この時、私の両膝を妻の脚が挟みこむポジショニング)
- 私のベッド側の脇に妻が頭を入れ、私を引き寄せる様に上体を起こします。
- テコの原理で私のお尻が持ち上がるので、妻がベッド側を向くと私のお尻もベッドの方向へ。
ザックリ言葉で説明するとこんな流れです。ポイントがいくつかあって、まずは3点支持。例えば両手の2点だけで人を持ち上げるのは普通無理です。ですが肩、腕、脚の3点で支持すれば、少ない力で持ち上げる事が可能です。基本的にお互いの胴体の一部が密着していないと腕力に頼る必要が出て来てしまうと言う事です。次はテコの原理。人は頭が1番重いので、イメージとしては介助される人の胸を肩に乗せる様な、或いは相手に自分の背中を覗き込ませる様な感じでしょうか。そこから少し上体を起こすと、相手の頭の重さで自然と下半身が浮き上がってきます。そしてもう一つ大切なのが膝のロックです。脚に力が入らない場合、「膝折れ」と言って移乗や起立をさせる際にガクッと抜ける様に崩れ落ちる事があります。我が家の場合は、ベッド側の妻の膝に私の膝裏を乗せる事で膝のロックを代替しています。
全く同じ動画は見当たらなかったのですが、1番参考になりそうな動画はこの辺りでしょうか。https://youtu.be/dd8c-0Mfqo8
より伝わる様に、我が家のトランスファーを動画にして近日アップしましょうかね。
医療関係者でも力任せな方が多いですし、旅先のタクシー運転手とかホテルの人だと尚更です。移乗で看護師さんに怪我させられた事もあるし、イタリアでタクシーに乗る時には、運転手さんが抱えられずに最終的にバックドロップで乗せられた事もあります。面白かったですけど。やはり身体の状態を知っていて、どの程度動けるか理解している人にフォローして貰えると怪我のリスクは格段に下がります。
海外旅行では行きの飛行機の乗降だけでも最低4回の移乗。車椅子からアイルチェア、アイルチェアから座席、座席からアイルチェア、アイルチェアから車椅子。これは空港の係の人が後ろから抱え、妻が脚を抱えて移乗です。慣れている方が多いのでここで不安を感じた事はないです。現地到着後はホテルでシャワーチェア、トイレ、ベッドなど移乗は結構有ります。しかも全て往復、移乗して終わりではなく車椅子に戻らないといけませんからね。
もし歩けない家族がいてとか祖父母が脚が弱くなったのでとか、そんな理由でなんとなく旅行を諦めている方がいれば「意外と大丈夫です!」と言いたいです。結局、不安は対処の仕方を知らないから湧いてくるのです。今回の「移乗」もそうですが、困るかもと思う事があるのならそれに対処する答えを用意すれば良いのです。ローマの哲学者の言葉に「およそ惨めなものは、将来の事を不安に思って、不幸が起こるかどうかもわからない時から不幸になってしまう心だ。」というのがあります。不安は未来にしかなく、未来は誰にもわからない。わからないのにわざわざ今から諦めたり不幸な気分に浸るなんて勿体無い。それよりも対処法を身につける努力をした方が建設的だと思うのです。
虹を見たければ少しの雨くらい我慢しなければ、というところでしょうか。